―グラストヘイム古城―
かつては文明が栄えてあったであろう城。
だが大戦後、今では魔物の住家と成り果てた
ここ古城の片隅に、魔物達の巣窟とは思えないほど神秘的な
魔物など絶対に近付けないほど聖なる気に満ちた場所。
川に囲まれ、橋が掛かったその先の広場の、
中央地面から刀身まで苔が生えてはいるが、
天からソレに向かって光が差し込んでいる
岩に突き刺さった、自ら主人を選ぶ聖なる大剣<エクスキャリバー>
その剣の目の前には、十字架(クロス)の紋章の入った鎧を纏った、紅髪の男が立っていた。
「――これが骨の鎧の欠片、っと。」
男は収集品を剣の元に置きながら、口を開いた。
よく見ると、他にも冒険の証であろう各地の収集品が置かれてあった。
「とりあえず、今ん所発見されてる土地での土産はこんな所だな。」
男はそう言うと、タバコに火を付け、大きく吸って煙を吐く。
「しかしめんどくせェ事になりやがったぜ…
以前モロクで起きてた"集団子供失踪事件"…
それをアサギルドから依頼され、協力して原因を追求。
犯人はモロク城に封印されてる"魔王モロク"の復活を企む一味が、
子供達を生け贄にしていたと判明。
だがあと一歩の所で逃がしちまった
その後ヤツラの消息は不明だが、
既に儀式は完了されていた為魔王の復活は時間の問題。
そこでオレは、遥か昔に魔王モロクを封印したという
"魔剣士タナトス"の封印の力を調べるべく、タナトスタワー最上階の調査。
だがそこにいるはずのソイツは…タナトスの剣士の亡霊はいなかった。
となると封印の力は確実に弱ってる証拠。
もう復活は確実に近ェ…いや嫌な予感もする、多分あと3日もねェな。」
男はどうやら剣に向かって、説明するかのように話し掛けている。
「…でも、心配すんな。
魔王だろーがなんだろーが、絶対ェにブッ倒してやンよ。
オレ達のモロクの街は潰させねェ…そうだろ?」
男は吸いかけのタバコを剣の元へ立てる。
「――思えばモロクとは、オレがこの世界に来た時からの付き合いだな。
りんご亭、ミルク亭…くるみ亭なんてのも作ったっけ、
そしてついに自分で立ち上げたハッパ亭…
5年以上も変わらず、溜まり場はずっとモロクだった。
懐かしいな、ここに来ると昔の事をいっぱい思い出す……良い想い出だな。
本当にあの街では色んな人達と出会い、色々なモノを得た。」
先程の話しの時の鋭い目付きとは変わり、今の男のソレは、とても優しいモノになっていた。
「まァ倒すっつっても安心しろよ、またオメェの力ァ借りるとかしねェからよ。
もう2度とオメェは抜かねェよ…そこで安心して寝てな?
今のオレは…今のオレ達の力でなんとかする。」
剣に背を向け、近くに刺してあった己の紅い槍<ヘルファイア>を手に取る。
「――積み上げてきた過去を、現在の力に変え、未来を創る。」
振り返り、エクスキャリバーに誓う
「行ってくるゼ――"戦友"」
紅いマントを翻し、聖剣に別れを告げる。
橋を渡った所に止めていた<ペコペコ>に乗ると、
男の体は、ロードナイト特有の狂気<バーサーク>に纏われ、紅色に輝き、走り出した。
そして、胸元に付けていたマリファナ型のバッジ<ギルドエンブレム>を、グイッと口元まで寄せる。
「…オレだ、紅葉(クレハ)だ。
ハッパ亭メンバーに告ぐ――魔王復活の為、全員今すぐ酒場に帰還せよ。
酒場を、モロクを守るぞ…!」
「――オレも、今戻るぜ!!」
■Episode 7.0 Return of the Archenemy【魔王モロク】
魔王モロクの名を冠し、街の地下にその身を封印した砂漠都市モロクに暗雲が立ち込める。
魔王の復活儀式は、名もなき冒険者達の活躍によって一度は阻止されたが、
長い封印の時を耐えて復活を夢見てきた魔王は、
封印の結界にできた小さいほころびを見逃すことなく、ついに復活を果たした。
復活後、魔王は二度と封印されぬよう、その原因として考えられるすべてを破壊し始めた。
魔王は隣接の軍事的、経済的支援の土台となる果てしない砂漠地帯を、
人間が立ち入る事を許さない死の土地に変えた。
砂漠都市モロクと隣接した砂漠地域が最も早く破壊され、
大陸の北側に向かう砂漠地帯も死の土地となった。
魔王モロク復活の報は、砂漠都市モロクから逃げ出した住民や冒険者達によって、
いち早く世界各地に伝えられたが、あらゆる憶測やでたらめな話が生まれ、
人々の魔王モロクに対する恐怖心を増大させた。
魔王の目的は、
手始めに自身を封印していた憎むべき砂漠都市を二度と再生できぬよう徹底的に破壊し、
その後、この世のすべてを同様に破壊し尽くす事だった。
崩壊する砂漠都市モロクを救うため、
世界各地から無名の勇士達や巨大なギルド連合が魔王に戦いを挑んだ。
戦いは果てしなく続くかと思われたが、多くの勇士達の犠牲により、
ついに魔王モロクを次元の狭間へ追放する事に成功した。
しかし、魔王復活の影響により砂漠都市モロクは多大なダメージを受け、
長い時間をかけての再建が必要となるほど徹底的に破壊された。
...to be Continued
かつては文明が栄えてあったであろう城。
だが大戦後、今では魔物の住家と成り果てた
ここ古城の片隅に、魔物達の巣窟とは思えないほど神秘的な
魔物など絶対に近付けないほど聖なる気に満ちた場所。
川に囲まれ、橋が掛かったその先の広場の、
中央地面から刀身まで苔が生えてはいるが、
天からソレに向かって光が差し込んでいる
岩に突き刺さった、自ら主人を選ぶ聖なる大剣<エクスキャリバー>
その剣の目の前には、十字架(クロス)の紋章の入った鎧を纏った、紅髪の男が立っていた。
「――これが骨の鎧の欠片、っと。」
男は収集品を剣の元に置きながら、口を開いた。
よく見ると、他にも冒険の証であろう各地の収集品が置かれてあった。
「とりあえず、今ん所発見されてる土地での土産はこんな所だな。」
男はそう言うと、タバコに火を付け、大きく吸って煙を吐く。
「しかしめんどくせェ事になりやがったぜ…
以前モロクで起きてた"集団子供失踪事件"…
それをアサギルドから依頼され、協力して原因を追求。
犯人はモロク城に封印されてる"魔王モロク"の復活を企む一味が、
子供達を生け贄にしていたと判明。
だがあと一歩の所で逃がしちまった
その後ヤツラの消息は不明だが、
既に儀式は完了されていた為魔王の復活は時間の問題。
そこでオレは、遥か昔に魔王モロクを封印したという
"魔剣士タナトス"の封印の力を調べるべく、タナトスタワー最上階の調査。
だがそこにいるはずのソイツは…タナトスの剣士の亡霊はいなかった。
となると封印の力は確実に弱ってる証拠。
もう復活は確実に近ェ…いや嫌な予感もする、多分あと3日もねェな。」
男はどうやら剣に向かって、説明するかのように話し掛けている。
「…でも、心配すんな。
魔王だろーがなんだろーが、絶対ェにブッ倒してやンよ。
オレ達のモロクの街は潰させねェ…そうだろ?」
男は吸いかけのタバコを剣の元へ立てる。
「――思えばモロクとは、オレがこの世界に来た時からの付き合いだな。
りんご亭、ミルク亭…くるみ亭なんてのも作ったっけ、
そしてついに自分で立ち上げたハッパ亭…
5年以上も変わらず、溜まり場はずっとモロクだった。
懐かしいな、ここに来ると昔の事をいっぱい思い出す……良い想い出だな。
本当にあの街では色んな人達と出会い、色々なモノを得た。」
先程の話しの時の鋭い目付きとは変わり、今の男のソレは、とても優しいモノになっていた。
「まァ倒すっつっても安心しろよ、またオメェの力ァ借りるとかしねェからよ。
もう2度とオメェは抜かねェよ…そこで安心して寝てな?
今のオレは…今のオレ達の力でなんとかする。」
剣に背を向け、近くに刺してあった己の紅い槍<ヘルファイア>を手に取る。
「――積み上げてきた過去を、現在の力に変え、未来を創る。」
振り返り、エクスキャリバーに誓う
「行ってくるゼ――"戦友"」
紅いマントを翻し、聖剣に別れを告げる。
橋を渡った所に止めていた<ペコペコ>に乗ると、
男の体は、ロードナイト特有の狂気<バーサーク>に纏われ、紅色に輝き、走り出した。
そして、胸元に付けていたマリファナ型のバッジ<ギルドエンブレム>を、グイッと口元まで寄せる。
「…オレだ、紅葉(クレハ)だ。
ハッパ亭メンバーに告ぐ――魔王復活の為、全員今すぐ酒場に帰還せよ。
酒場を、モロクを守るぞ…!」
「――オレも、今戻るぜ!!」
■Episode 7.0 Return of the Archenemy【魔王モロク】
魔王モロクの名を冠し、街の地下にその身を封印した砂漠都市モロクに暗雲が立ち込める。
魔王の復活儀式は、名もなき冒険者達の活躍によって一度は阻止されたが、
長い封印の時を耐えて復活を夢見てきた魔王は、
封印の結界にできた小さいほころびを見逃すことなく、ついに復活を果たした。
復活後、魔王は二度と封印されぬよう、その原因として考えられるすべてを破壊し始めた。
魔王は隣接の軍事的、経済的支援の土台となる果てしない砂漠地帯を、
人間が立ち入る事を許さない死の土地に変えた。
砂漠都市モロクと隣接した砂漠地域が最も早く破壊され、
大陸の北側に向かう砂漠地帯も死の土地となった。
魔王モロク復活の報は、砂漠都市モロクから逃げ出した住民や冒険者達によって、
いち早く世界各地に伝えられたが、あらゆる憶測やでたらめな話が生まれ、
人々の魔王モロクに対する恐怖心を増大させた。
魔王の目的は、
手始めに自身を封印していた憎むべき砂漠都市を二度と再生できぬよう徹底的に破壊し、
その後、この世のすべてを同様に破壊し尽くす事だった。
崩壊する砂漠都市モロクを救うため、
世界各地から無名の勇士達や巨大なギルド連合が魔王に戦いを挑んだ。
戦いは果てしなく続くかと思われたが、多くの勇士達の犠牲により、
ついに魔王モロクを次元の狭間へ追放する事に成功した。
しかし、魔王復活の影響により砂漠都市モロクは多大なダメージを受け、
長い時間をかけての再建が必要となるほど徹底的に破壊された。
...to be Continued
#
by kureha_shinguji
| 2008-09-07 07:35
| 小説